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引間彬方 (経S38卒) |
ラテン語の楽しみ
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2017.4.20
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ラテン語の楽しみ 引間彬方 (38年 経済) 南米のカラカスに家族で駐在したのが1975年であった。OPEC全盛で産油国がブームに沸いている頃で、近隣諸国を含め日本向けの鉱産資源の開発・確保を目指して明け暮れる毎日であった。 土地柄、スペイン語が必須であったが、第二外国語はドイツ語のため、現地に行ってからゼロからのスペイン語学習をせざるを得なかった。帰宅してからも毎日文法だけは目を通していたので、以外にも1年後には仕事にも不自由を感じることは無くなった。 帰国後、スペイン語を使う機会は無くなったものの、この美しい言葉を忘れてしまうのは忍びなく人事に頼んだら、1年間中級スペイン語をスペイン人教師から学ぶ機会を得て、略身につく事が出来た。昔はこんな良き時代でもあったのだろう。 その後、米国(New York, Philadelphia)での駐在・生活を経て帰国する際、いつか日本でもスペイン語を含むロマンス語や、人文・自然科学の専門用語の源となっているラテン語を勉強すべく羅・英辞典や文法書を購入して帰国した。 さて今は、鳥居坂にある大学の学習センターで「ラテン語講読」を受講して7年目になる。 古代ローマ史の教授の下、同じような経歴(商社、メーカー、エンジニアリング社)の12名の仲間と共に、(ルーマニアへ流刑された)オウィディウスの「変身物語」、カエサルの「ガリア戦記」(1、2巻)、「ヨハネ伝」(現在講読中)を原書講読している。 何せ、カエサルの著作でさえ、紀元前55年頃に記されたもので、当時の元老院への報告を意識してか真に迫る表現は圧巻である。また、ガリア(フランス地域)には多くの部族民が割拠しており、正確な情報をもとにこの部族統治に腐心していた。 例えばカエサルはHelveti族(現在のスイス)を賢明な部族民として好意的に扱っているが、現在のスイス国のラテン語名(通貨にも記述)が CH であり、H はこの部族名由来であることなど、新しい発見があることが嬉しい。 クラスで話題になった中世の修道士による詩 ‘Stabat Mater Dolorosa’ (悲しみにたたず聖母)を、羅・英・日語の文章にまとめ比較することもまた楽しみでもあった。 実は、上野の西洋美術館の常設館(Seniorは入場無料)に、同名の絵があり(Dolci作)月一度そのラピスラズリに彩られた聖母を訪問するのが、ラテン語授業後の楽しみでもある。 特に、「聖母」を堪能した帰りは、いつもの新所の店で、三田会のゴルフや麻雀仲間と杯を重ねて談論風発、時間を忘れて過ごす事、これも正に Quality of Life の向上に繋がっている事は間違いない。 堀越夫人(ユリアさん)の父上が、慶應義塾のラテン語の教授をされていた頃の粋な著作物が、時に我々仲間の話題に上ることも楽しいことである。
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